P2Pネットワーク実験協議会シンポジウムに行ってきた
P2Pネットワーク実験協議会シンポジウム「P2P技術の利用・サービスに関わる取組・実験の最新動向」 に行ってきました。 「Tomo’s HotLine: P2Pネットワーク実験協議会シンポジウムのご案内(2/19[火])」 で紹介されていたからなんですが、 行ってみたらスーツの人はいるわ、報道の人はいるわでびっくりですよ。 P2P勉強会界隈の集まりかと思ってたのに。
んで、この協議会が何であるかってのを 会長の浅見徹先生、 マルチメディア振興センターの有冨寛一郎理事長(総務省出身?)、 総務省の黒瀬泰平課長、 ガイドライン策定の責任者江崎浩先生、 NTTコミュニケーションズの山下達也部門長 の講演から解釈してみます。 というのも、ひとりひとりの講演は部分的なもので、全体像が見えてこないんですよ。 そもそも、こういう対立関係があるみたいなんです。
- P2P規制容認派: 一部のユーザがP2Pソフトでネットワーク帯域を使いすぎだから、なんとかしたい。 従量制の料金体系なり帯域制限なり、手を打とう。
- P2P規制反対派: 規制されるとビジネスが成り立たなくなって、困る。 悪いのは一部のソフトウェアとユーザであって、 我々はまっとうなビジネスをしている。 それにP2Pはうまく使えばネットワークの負荷も減らせるはずだ。
規制容認派が誰のことかというと、これは明言されてないので、よくわからない。 謎です。 規制反対派は今回参加している各企業の人とか、 あとは研究者の人なのかな。 これも実は明言されてない。 それから、一方の当事者であるISPの意向も、謎とされています。 総務省の意向としては、 ネットワークの混雑をなんとかするのが大目標らしいのですが、 P2P技術の活用なのか、帯域制限なのか、どっちに重きを置いているのか、 まだ判断を保留しているのか、この辺もよくわからない。
まあ、おおざっぱにいえば、 協議会とはP2P規制反対派(企業+研究者+総務省の反対派)で作った組織 ということになるんじゃないかなと思います。 かつ対象にする領域はP2Pコンテンツ配信に限定されています。 この辺は理由がよくわからないのだけど、 トラフィックが問題になるのはコンテンツ配信だから、という理屈なのかな。 で、協議会は2つのワーキンググループから構成されています。
- ガイドライン策定WG: 「我々はまっとうなビジネスをしている」の、 「まっとう」さを定義するものだと思う。
- 実証実験WG: 「P2Pはうまく使えばネットワークの負荷も減らせるはずだ」を 実証するためのもの、らしい。
ガイドライン(1.0版、PDF形式なので注意)については別の記事で扱いたいと思います。 今回のシンポジウムでは20分のプレゼンだけだったし、 よくわからないことが多いんですよね。
それで実証実験についてです。 これの大目標はP2Pでネットワークの負荷を減らすということです。 要はCDN なんですが、 全てのISPが幸せになるには、全てのISPにCDNの中継器が入る必要があり、 実際には中継器は東京や上流のISPにしかないと。 そこでP2Pを安価・小規模なCDNとして解釈・実装できないか、 という話になったわけです。 P2Pの各ノードが、ネットワーク的に近いところとのみ通信をするのであれば、 ISPを跨ぐような通信は最小限に抑えられ、 ネットワーク全体のトラフィックも少なくなる、という理屈です。
ただ、このあたりは参加企業の発表を聴いていると、 特に話題になっているわけではないんですよね。 配信のルートサーバの負荷を下げることができますよ (例えば本来の10%以下の負荷になりますよ)、みたいなのばっかりで、 そりゃ負荷が下がらなかったら大変なんですが、 ネットワーク全体のトラフィックについては特に言及なし。 まあ、今はまだデータを取っているだけの状態だから、 そこまで分析はしてないよ、ということなのかな。
むしろ行政と企業が協力して、実験室レベルではなく 実際のネットワーク、実際のユーザを巻き込んで実験をしている、 というところに価値があるのかな。 とはいっても、どうも参加ユーザが少なく、数百~数千人レベルで 例えばWinnyユーザ数には全然及ばないんですね。 ひとつには認知されてないのかな、と。 僕も全然知りませんでしたからね。 あとは著作権関係かな。 角川もコンテンツを提供していますが、 これってどのくらい人気あるのかな。 ブラザーのダンス動画もよくわからない。 著作権的にクリアなものを選んだらこうなった、ということなのかな。 どのくらい需要があるんだろう。
あとは細かい話を箇条書きで。
- 会場は微妙。暗くてメモ取りにくい。携帯電話・PHSの電波が入らない。
- 会場のスクリーンは左半分がパワポ、右半分が講師のポートレイト。
- 浅見会長が草の根P2P って言ってた。
- 基本的に質疑応答の時間が組まれていない。
- 西谷さんには質疑応答の時間があったのに質問なし。
- 首藤さんの講演で新月に言及あり。 ありがとうございます。
- 江崎先生いわく「Winnyにサービス主体はない」から、 ガイドラインの影響は受けないということかな。
- 実験ではデータ集計の専用クライアントもばらまいてある。
- 午後になったらスクリーンの上に張ってあった「P2Pシンポジウム」 の看板が落ちてきた。
- シェアキャストという老舗があって、 初日の出を中継にいったり、 ユーザが配信する生放送+チャット(Ustreamの先取り) ができたりした。 流行らないのは専用クライアントが要るからかな。
- 最後質疑応答の時間があって、 東大?の先生が「ガイドラインで研究者や開発者を縛るな」と質問して、 浅見会長か江崎先生が「嫌ならガイドラインを使わなくても結構」と 激しく反論、売り言葉に買い言葉になっていた。